マー子のざれ言

笑いながら死にたい

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白くてちょっと丸い何か


 ミルクティー特有の、甘味が口の中にずっと残る感じが嫌だと、いつか、エリカが言ってたのを思い出して、
コンビニで、ペットボトルのストレートティーを買って帰った。

 その道中、割と大きな銀行の裏口付近の路地。
夜になると、明かりがないその道はすごく薄暗くなって、ビルと隣接しているためか、圧迫感がある。
たまに吹く向かい風が、厚手の上着からでも針のように突き刺さってくる。
 いつかエリカと、近道だからといって、夜、その道を通ろうとしたら、本気で嫌がっていたことを思いだした。
 「ここって何かさあ、あの世とこの世の境目みたいじゃない?人が死んで、魂とかになったら、絶対、
こういう道を通って、あの世に行くんだと思うよ。すごく冷たいし、何だか、即死した人とかって、まだ何かさ、
自分はまだ生きてると思い込んだまま、死んで魂だけになった感じあるじゃない?それってまだ、生きる『気力』
みたいなものを持ったまま、あの世に行っちゃってるみたいな。その、生きようとする『気力』を、
ここで全部削ぎ落としていく作業とか、しそうじゃない?ここにいると、何か死にたくなるもん。すごく死にたくなる」

 そそくさと、速足でその道をかけぬけていき、出口にさしかかって、ようやくぼやけた黄色の明かりが見えてきたあたりで、
「白くてちょっと丸い何か」が、上から落ちてきたみたいに、ボクの手前5メートル近くに出現し、
考える思考がまとまらないうちに、その「白くてちょっと丸い何か」が、腹あたりに突進してくるぞ、みたいなフェイントというか。
 言葉にすると、「いくぞ!」みたいな意志というか、そういうのがボクの脳裏にすごいスピードで焼き付いてきて、
その頃から、やっと、「俺は『白くてちょっと丸い何か』を見た」ということが、しっかりと頭で確認がとれた状態。
 詰まる話、本当に一瞬の出来事だった。とにかく、目でその景色を描写していく作業が、全然追いつかなくて。
例えば、足の小指を角にぶつけたとき、激痛がやってくる前のほんの瞬間、「あ、くるぞ」みたいな、ちょっとした感覚。
あれにすごく似ていたように思う。腹あたりに突進をくらって、「あ、痛みがくるんだな」みたいな。
 だが、「白くてちょっと丸い何か」は、ぶつかる寸前で姿が消えた。
 すーっと、どんどん透明になっていって、ボクに近づくにつれて、存在が希薄になっていくような感じだった。
 身体をすり抜けたのかと錯覚したが、特に外傷もない。強いて言うなら、驚かされた直後に胃の上の方で起こる、
どっと、重たいものが埋め込まれているような感じ。それだけだった。

 家に帰宅して、エリカとストレートティーを飲みながら、「名探偵コナン」を見た。
 ミステリーな話は、勝手に頭が色々と考え込んでしまう不思議な魔力があると思う。この歳になってもそれは同じで、
「白くてちょっと丸い何か」のことで少し疲れているのに、答えを求めようとしているボクがいて、余計疲れてきた。
 「こういう話考える人ってさ、簡単に人を殺せると思わない?こんなのされたら、普通解決出来ないよこんなの!」
 難解な事件にテンションがあがるエリカは、新しい物でも見たような子どもの眼差しで、「名探偵コナン」を凝視している。
その顔をみていると、いたずら心が芽生えてしまい、勝手にテレビのチャンネルを変えてやった。
 ボクの予想通り、「あーんいじわるー」と呻いてみせたエリカは、ふくれっ面でこちらを睨んでいる。可愛い。

 次の日、「昨日母親がダンプカーに突き飛ばされ、即死した」と、父から電話があった。














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